Silverio Pessoa/Cabeca Eletrica Coracao Acustico(2006年 Outro Brasil OB CM865302)
シルベリオ・ペソーアのソロアルバム実質3作目。
1作目がJACINTO SILVA作品集、2作目がフレーヴォのプロジェクトアルバムだったことを
考えると、彼のオリジナル作品を中心に構成されたアルバムとしては、実にカスカブーリョの
名盤ファースト・アルバムFOME DA DOR DE CABECA以来で、本作でもシルベリオ作の素晴らしい作品を
たっぷり味わうことが出来る。これまで一貫して描いてきた彼の故郷の風物に加え、近年のフランスを中心とした
ヨーロッパツアーにおける経験からの着想も盛り込まれている。
サウンドがFOME〜に近いと思わせるのは、そのときにサンフォーナを
演奏していたGenaroが再び多くのトラックで参加しているからかもしれないが、一方で
最近の彼のサウンドには欠かせないという10弦ギターの比重が大きくなり、これまでに培ってきた
サンプリングやループも組み合わせた円熟かつ進境著しいサウンドに仕上がっている。
声の魅力を知り尽くした自身のボーカル術も相変わらず冴え渡っている。
それだけでも十分良いのに、大物ゲスト達がこのアルバムにより一層の彩りとエレガンスを添えるのだ。
ドミンギーニョス、レニーニ、アルセウ・バレンサ、ルーラ・ケイローガのゲスト・ボーカル、
ドミンギーニョスのサンフォーナにメストリ・アンブロージオのシバのハベッカ。
あまりの音の豊かさにめまいがしてくる。超オススメ、名盤決定。
[オススメ度★★★]
|
Elba Ramalho e Dominguinhos(2005年 BMG Brasil 82876665962)
ルイス・ゴンザーガへのトリビュート・アルバム「ELBA☆CANTA LUIZ 」(名盤!)では、
ドミンギーニョスがサウンドプロヂュース+歌という形で、共演をしていたが、
今回は完全デュオという形での共演が実現。わざわざこのアルバムのためにデュオとして
BMGと契約したとのこと。長年のエルバのサウンド・プロデューサー、ゼー・アメリコと
ドミンギーニョスとの強力なタッグにより、フォホーのアルバムというよりは、極上のポップス
アルバムという感じに仕上がっている。エルバが全盛期の80〜90年代ポップスというか
古きよきMPBサウンドに、ため息が出る美しさのドミンギーニョスのアコーディオンのフレーズ、
そして、50代、60代の2人が(笑)しっとりと歌いあげるという、ああこの贅沢な、
全編をとおして、極上のショウを見ているような、まさに大人が十分に楽しめる出来上がり。
収録曲に、ファラマンサの曲(Chama)を入れちゃうのもエルバらしいが、これがなかなかいい曲。
てか、ドミンギーニョスにファラマンサの曲を歌わすエルバ、なかなかやります。
選曲はドミンギーニョスの代表曲中心で、シコ・ブアルキ、ジャヴァン、ジルベルト・ジル、
ナンド・コルデルら有名どころとの共作曲もバッチリ収録。作曲家としての偉大さもあらためて
認識できる。そんなドミンギーニョスを独り占めしちゃったエルバは、まさに恍惚の境地だろう。
いい仕事をしてくれた。[オススメ度★★★]
|
Coco do Amaro Branco(2005年 MR1253)
Coco do Amaro Brancoはレシーフェはオリンダにある素朴な漁師町のミュージシャンにより
初めて録音されたというコーコのCDだ。Ana Lucia、Ferrugem、Mestre Dedoのコーコの
達人3人が自らの作品をソリッドなバックの演奏により歌い上げている。
100年以上も街で培われたコーコの伝統と自らの人生経験からつむぎだされる言葉は
素朴かつ清楚だ。信仰に根ざし、短くロマンティックなAnaの詞、病気で足の不自由なFerrugemは
その苦悩と自問自答を言葉に吐き出す。月の20日以上は海に出ているという漁師Mestre Dedoは
自然との戦いの中でインスピレーションを得て素朴で力強い歌をつくる。コーコの初心者には
少々退屈かもしれないが、聞き込めば聞き込むほどよくなってくる良い作品だ。[オススメ度★★]
|
Nacao Zumbi/Propagando(2004年 TRAMA AA10000)
マンギ・ビートの元祖バンドによるサンパウロでのライブDVD。SAMBATOWNの上沖さんが、
強引に薦めるもんだから(笑)買いましたが、超Cool。元ボーカルのシコ・サイエンスが
突然の事故で死んで以降のバンドNacao Zumbiの作品は試聴とかで聴いて、あ、やっぱいいなと
思いつつも、どうもまともに向き合って聴く気になれなかった。それだけ、シコの存在感は
大きかったのであり、バンドとしてその幻影をと戦いつつ活動を続けていくことは当然難しいはずだ。
後を継いだボーカルのJorge du Peixeは、自身のボーカル表現を含めてサウンドをCoolに
まとめることで、Nacao Zumbiとして続けてやっていく方向性を見い出していた。
ボーカルは、ほとんど感情を外に出さない。ボンボは3人使いつつ、マラカトゥ・ウルバーノで
見られる激しい連打は全く見られない。ギターとドラムが少々熱めにプレイしているのと対照的。
その、よりCoolになった点を除けば、デビュー時に提示されたマンギビートのサウンドから
そんなに変わっていない。妥当な選択だろう。シコの存在感と残ったメンバーによる
新たな作品を同居させるために、自然とそうなったのだろう。マラカトゥとロックとヒップ・ポップを
混ぜ合わせたかっこいいサウンドは、歴史と現在をクールにミックスしつつ、静かに
進化し続けている。[オススメ度★★]
|
Luiz Gonzaga/Danado de bom(2003年 BMG Brasil 82876513889)
遅まきながら、やっとルイス・ゴンザーガのDVDを入手。1984年5月に収録された
グローボ・テレビのショー番組の映像記録だ。パッケージ裏の解説文にあるとおり、バイアォン(フォホー)を
どのように歌い、どのように踊るのか、そして付け加えるならば、その楽しさ、を
フォホーに絶大な影響力を持つ当人が、老いてなお元気いっぱいに教えてくれる。
そして、ゴンザーガを敬愛し、その正統派フォホーを承継したミュージシャン達、
アコーディオンの愛弟子ドミンギーニョス、実子のゴンザギーニャ、代表的
アコーディオニストのシブーカとオズヴァルヂーニョ、歌手のファギネル、エルバ・
ハマーリョ、ドミンギーニョスの妻グアダルーペとの共演がフォホーパーティーを盛大に
盛り上げてくる。彼の多くの作品の背景であるブラジル北東部の故郷を紹介する映像や
実子ゴンザギーニャとの確執から和解して実現した1980年の共演コンサート映像、
ゴンザーガ全盛期の1953年時のテレビ映像などボーナス・トラックも充実。
彼の最も有名な代表曲のタイトルで、故郷北東部地方で見られる鳥の名前でもある
「アーザ・ブランカ(白い翼)」がどんな鳥かを見ることが出来るのもちょっとしたポイント。
歴史的映像としての価値が高いのは言うまでもないが、特に北東部音楽、フォホーは
初めてという人には、是非お勧めしたい1枚である。[オススメ度★★★]
|
Forro' do Brasil(2004年 ARC Music EUCD1878)
近年のフォホーブームのおかげで、いわゆるフォホーのCDが広く流通するようになった。
フォホー好きには非常に喜ばしいことだが、ここ数年制作されている作品は総じて、
10年来フォホーを聴いてきている僕にとって、いまいちしっくり来ないと感じていた。
いや、悪くはないんだけど、一言で言えば、今のフォホーはなんかこぎれいで野性味に欠けていて
物足りないということなんだと思う。
このフォホーのコンピレーションアルバムは、いかにもいい加減そうな感じに見えるジャケットとは
裏腹に中身はなかなか硬派。ルイス・ゴンザーガ以降フォホーを育んできた実力ミュージシャン達による
1970-90年頃の音源が収録されている。名の知れているところでは、Trio Nordestino、Ary Loboなど。
ゴンザーガ他の有名作品を随所に散りばめた佳曲揃い選曲も良し。ところどころ、
演奏をトチっている部分もあったりするが、それを補って余りある野性味の魅力がある。
入門盤にぜひと勧めたいところだが、歌詞カードがついてないのが非常に残念。とはいえ、本来の
フォホーの音を伝えてくれる良質のコンピレーションアルバムとして高く評価できる。
[オススメ度★★]
|
Chao e Chinelo/Loa do Boi da Meia-Noite(1999年)
中南米音楽さんで新入荷したようなので、書いておきます。1995年結成のグループのおそらく唯一のアルバム。メストリ・アンブロージオと同じく
ペルナンブーコ内陸部の音楽をベースにして、アハスタペ、コーコなどを楽しく演奏しています。
全体をとおして、ハベッカの活躍するサウンドは、一聴するとメストリの二番煎じの
ように思われがちですが、ディストーション強めのエレキギターがハベッカに負けないぐらい
絡んでおり、マンギ・ビート好きにも受け入れやすい。それと、メストリより音楽性が明るい。
っていうよりは、メストリが何となく暗いのかも・・・。
そういうわけで、ポップで聴きやすいアルバムです。ハベッカ好きは持っていて損はない
アイテム。ちなみに僕は、昨年のメストリ公演の時にマネージャーさんが入場口の横で
売ってたののを何となく勘で買いましたが、悪い勘ではなかった。それから1年ぐらい経ちますが、
僕の車の中では未だにリピートでかかります。全10曲であっと言う間に聞き終わってしまう
ところが少々残念かもしれない。
[オススメ度★★]
|
Elba Ramalho/Elba ao Vivo(2002年 BMG Brasil 74321971249)
2002年10月リオのATLホールで行われたルイス・ゴンザーガへのトリビュート・ライブを収録したDVD。
先発のトリビュートアルバム「ELBA☆CANTA LUIZ」に収録された曲、いや、むしろ収録されなかった
ゴンザーガの曲も多く、CD+DVDで気の済むまでトリビュートしましたという感じだ。50歳を超えている
とは思えないハジケっぷりが楽しい。総勢11名のバック・バンドを従えての豪華フォホーのライブができるのは、
エルバ様が今のノルデスチ音楽における最大のスターたる証だ。しかも、片やサンバ・パゴーヂ界の最大のスター、
ゼッカ・パゴヂーニョとさらにルイス・ゴンザーガの愛弟子ドミンギーニョスをゲストに招いての共演など贅沢三昧。
何といってもハイライトは、ドミンギーニョスと一緒に歌う非常に美しいナンバーDe volta pro meu aconchegoで、
エルバはドミンギーニョスにうっとり、観客は歓喜の大合唱とまさに至福の瞬間。思わず何度も繰り
返して再生しちゃえるのはDVDの良いところ。バック・バンドは、あまり有名でないミュージシャンながら
手堅い演奏で良い。ゴンザーガ以外のヒット・ナンバーも随所にあり、ボーナストラックなどの付録もあり、
至れり尽せり。しかし、映像の方は・・・化粧ノリ(ヌリ?)まくってるエルバ様のアップに畏怖の念を覚えたり(汗)。
ゴンザーガ、フォホー、ノルデスチへの愛と喜びにあふれた素敵な1枚だ。Paz e amor!
[オススメ度★★★]
|
Chico Cesar/Respeitem meus cabelos, brancos(2003年 MZA Music)
いいアルバムだ。詞と曲のよさ、コンポーザーとしての才能をあらためて認識させられた。
が、それだけでなく歌もギターもうまいのだからまいっちゃう。彼の独特のパイナップル
頭をネタにしたタイトル曲はおなじみのレゲエ調シコ・サウンド。しかし、M2の、
スザーノのパンデイロ&タブラに、トニーニョ・フェラグッチのバンドネオン風
アコーディオン、そしてシコ・ブアルキとのダブルシコによるボーカルは意欲的な
現代風のアレンジに多少意表をつかれる。全トラックにわたって、シンプルながら現代的で
心地よいサウンド。M12では、カルリーニョス・ブラウンのリズム・アレンジも聞ける。
全曲約45分と適度な長さも良い。個人的にはオススメ度3ツ星だが、歴史的名盤となるか
どうかは長い目で見る必要あり。というわけで[オススメ度★★]
|
Paratodos/Paratodos(2001年 COLUMBIA 2-495994)
おそらくForroçacanaの二番煎じを狙っていただろうグループの
ソニー・ミュージックから出したファースト・アルバム。ヒッピーっぽいルックスや裏ジャケ写の赤いゴージャス・ソファー
などがそれらしい。プロデュースが、Robertinho de Recifeで、Waldonysなどの実力派アコーディオン奏者を
各トラックに起用したカッチリサウンドで、最近のフォホーはどうも・・・という向きにも聞きやすい。
ベースのEduardがほぼ全曲を作って頑張っているが、やはりフォホサカーナの方がクオリティーが高い。
惜しい。ちなみに、バンドはその後ほどなく分解状態となった模様。 <オススメ度★>
|
Dominguinhos/Chega de mansinho(2002年 Caravelas)
オーソドックスだが良質なフォホーサウンドが聴ける。もともと発表ペースの早い人とはいえ、
オリジナルアルバム、エルバのアルバムを含めてここ数年のリリースの多さには驚くばかり。
60過ぎて未だ衰えず!ファンにはうれしい限りです。アナスタシアとの共作曲、SANFONA SENTIDA
は隠れた名曲!
<オススメ度★★>
|
Elba Ramalho/ELBA☆CANTA LUIZ
出るべくして出たルイス・ゴンザーガのカバー集!ドミンギーニョスやジルなどの他の
トリビュート・アルバムなどとは一味違うものをと意識された選曲は、確かにあまり
カバーされていないものが多い。アレンジはほとんどドミンギーニョスで、仕事きっちり
という感じ。ちょっと浮気して、ゼッカとの共演曲XAMEGO DA GUIOMARなどトニーニョ・
フェラグッチによる楽しげなアレンジの2曲を入れずにいられないのはエルバの性分だろう。
アルバムタイトル曲のアレンジは、えっ、これってこんな良い曲だったんだと思わせる感動
的なアレンジ。 <オススメ度★★★>
|